「COC概論」第3、4回講義を実施しました。

新入生を対象とした地域志向教育科目「COC概論」の3、4回目の講義を実施しました。今回から各プロジェクトフィールドで実践活動に取り組む方をお招きしての講義となります。

 

COC概論 第3、4回(2015年4月29日)

地域資源マネジメントプロジェクトフィールド担当回

江崎保男教授(大学院地域資源マネジメント研究科)

「地域資源マネジメントの理論と実践:エコロジーの視点から」(約90分)

野口真麿子さん(大学院地域資源マネジメント研究科院生) (約40分)
「新しい視点を得るために」

江崎先生と野口さんによる学生とのトークセッション(約40分)

学生のレポート執筆

 

まず1限では江崎教授から、生態学の理論や生物多様性、コウノトリの野生復帰にむけた取組み、地域資源をワイズユーズしていく必要性やそのための地域や大学における取組みについて講義がなされました。グラフや写真に加えて、身近な事例に置き換えて学生に分かりやすく説明された講義を聞いた学生からは「生物多様性について自分たちに関わることとして捉えられるようになった」という感想が聞かれました。

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写真1)江崎先生の講義

 

2限目では、地域資源マネジメント研究科修士2年生である野口さんによるプレゼンテーションが行われました。学部時代の経験を踏まえた進学の契機や大学院での研究、特にフィールドワークの重要性や社会学・生態学・地質学といった多分野の教員・院生よる大学院での研究の様子について発表されました。現在、豊岡市で築250年の古民家をシェアハウスし、地域の方々と交わりながら研究を進める先輩・野口さんの姿は、学生にとってとても驚きであったようです。

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写真2)野口さんのプレゼンテーション

 

引き続き行われた江崎先生と野口さんによるトークセッションでは、学生から提出された質問紙による質問を10のカテゴリーに集約して、お答えいただきました。質問内容は「生物多様性を保護する取り組みについて、私たち(学生や一般人)が身近にできる取り組みやボランティア活動があれば教えてほしい」といったものから、「なぜコウノトリなのか」「自然の法則に人為的に介入することに問題はないか。ツーリズム等に活用することで生じる問題はないか。人間のエゴではないか」「人間の都合に合わせて改変した自然であるなら、必要なくなったら自然に戻したら良いのではないか」といった生態学を通じた地域貢献の取組みの根幹に関わる質問もありました。また「地域資源マネジメントの取り組みで、どのような時にやりがいが感じられるか」「一つのプロジェクトについて、企画から実行までどれくらいの期間がかかるのか」というようなプロジェクトの運営や実施に関わる質問も飛びました。

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写真3)江崎先生と野口さんによるトークセッション

 

この他に、フロアの学生から「(野口さんのコウノトリのなわばり研究に関して)コウノトリの寿命は?」「淡水魚を地域ブランド化した際に、逆に資源枯渇を招くのでは?」「NPO活動をしたいと思ったらどうやって探せばいいのか」といった質問も直接投げかけられました。質問の一つ一つに、江崎先生と野口さんから丁寧に回答があり、学生からは「実際に地域で活動する方の話を聞いて、その方がどのような思いで活動を行っているのかが分かった」「大学の研究と社会との接点が分かった」「ディスカッションではもっと会場に質問を振ってもいいのではないか」というような感想が聞かれました。

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写真4)学生からの質問の様子

 

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写真5)受講生の様子 1

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写真6)受講生の様子2

 

[受講生のみなさんへ]

 

提出された質問に対する回答を以下に掲載します。質問・回答を読んで、授業の振り返りをしましょう。

 

(コウノトリについての質問)

· 年齢(1〜6歳)は、人間でいうと何歳に当たるのか。

回答:野生動物と人の年齢比較は一般的に非常に困難です。人以外の動物は、子を残せなくなると死んでしまうからです。そこで、今回は成熟に達する年齢から試算してみましょう。コウノトリは3歳から4歳で成熟します。人の成熟は概ね15歳から20歳ですので、コウノトリの初期年齢は概ね人の1/5(3/15=4/20)に相当すると考えられます。すると1~6歳は5歳~30歳となります。

 

· どのような場所や気候を好むのか。

回答:コウノトリは河川の氾濫源で餌をとるように進化してきた鳥です。

※氾濫源:かつての河川下流部は洪水があるたびに流路を変えていました。このような折に河川の流路でない場所は低湿地となり、あちこちには水たまりがありました。このような低湿地を氾濫源とよびます。ちなみに、人が中世以降大規模な堤防をつくって、流路を固定したのです。

日本においては氾濫源の代償地が水田です。ですから、日本のコウノトリの生息には水田が欠かせません。なお、ロシアのアムール川流域ではいまも広大な氾濫源が広がっており、これに隣接する平地林に巣をかけ、氾濫源を餌場としてコウノトリが繁殖しています。

次に「気候」ですが、ロシアのコウノトリは渡りをする(冬期は中国南部で越冬)ので話が少々複雑です。一方、かつての豊岡盆地には年中コウノトリがいたことがわかっています。当時は今よりも雪が多かったので、かなりの積雪地でも繁殖・越冬できるということです。ですから、彼らが生活できる「気候」の幅は、かなり広いことは確かです。ロシア・シベリア地方の冬は強烈に低温で餌がなくなるので、餌を求めて南に渡る、いっぽう、日本であれば餌さえあれば越冬も可能ということです。

 

· 縄張りを調べることからどのようなことがわかるのか。

回答:なわばりの調査をすることにより、コウノトリがどれくらいの範囲を自分たちのなわばりとして防衛しているのかが見えてきます。そして、その中でコウノトリ同士がなわばりをめぐって他個体とどのような関係(これを社会関係という:後述)を築いているのかを知ることが出来ます。また、なわばりは一般的には、ペアと子の餌をまかなえる面積をもっているはずです。ただし、この面積がその場所の餌密度(もっと正確には餌のアヴェイラビリティ=得やすさ)の影響を受けることは容易に想像できるでしょう。つまり餌密度が高いとなわばりは小さくなるはずです。そして、このことはこれからの研究課題です。

また、なわばりを調査することにより、なわばりを持たない単独個体(フローター)のことも見えてきます。「なわばり」は、動物生態学のなかで長い歴史をもつ洗練された概念で、鳥だけでなくいろいろな動物で研究が重ねられてきました。ですから、なわばりをとっかかりにして研究を進めることにより、動物の社会と経済(生態学は社会学と経済学です)に関する多くの事が見えるようになるので、まずは、なわばりから研究に入るのがうまい研究の進め方なのです。個体数の変動・制御システムなどは、なわばりから見えてくる代表的、かつ重要な事象です。

 

· 捕食対象との関係について詳しく知りたい。

回答:コウノトリは水田生態系(正確には水田の生物群集)の頂点捕食者です。つまり、コウノトリの捕食者が水田生態系には存在しないということです。コウノトリが生きていくためには、餌動物がいなくては生きてはいけません。そしてその餌動物もそれが食う餌生物がいなくては生きてはいけません。このような関係=食物連鎖が維持されるためには、捕食者の数は被食者の数よりも少なくなくてはなりません。でないと、双方ともいずれ絶滅してしまうからです。これを生態ピラミッドのうちの、「数のミラミッド」と呼びます。

別の観点からの回答をもう一つ:コウノトリは完全肉食ですが、肉食のなかの「何でも屋」です。ですから餌は季節的に変化します。春~初夏:水田のオタマジャクシや水生動物;夏:稲が繁茂し水田にはいれなくなるので、畦のバッタ・イナゴ;稲刈り後:水田のカエル・昆虫;秋:河川の落ちアユ;冬:陸地は雪に覆われるので、河川でサカナ、といった具合です。ヘビは結構よく採りますが、他の餌と違って、コウノトリにとっても警戒すべき相手でしょう。このように餌動物との関係は多様だといえます。

 

· 雄雌の間に年齢の幅があっても交配出来るのか。

回答:コウノトリにおいては、一般的に3歳以上の雌雄であれば年齢に幅があったとしても、交配することは可能です。実際、3歳以上離れたオスとメスがペアとなり繁殖しています。現在、国内にいるコウノトリの年齢幅はかぎられているので、今後、20歳や30歳といった個体が仮に独身になったとき(配偶者が死亡して)、何が起きるか楽しみですね。

 

· 一生同じペアで過ごすのか。相手がいなくなった後、他の個体とペアになることもあるのか。

回答:基本的に一度つがいになると死ぬまで同じ相手と繁殖します。もし途中で配偶者が事故などにより死亡した場合は、他の単独個体と新たにペアを形成します。豊岡では昨年メスを事故で亡くしたオスと他のメスがペアを形成し、現在子育てを行っています。

 

· 保全活動の実践に至るまでのプロセスや、企画段階の苦労が知りたい。

回答:コウノトリの保護・保全の歴史は今年でちょうど50年になります。最初は野外に残っていた個体を捕獲し、ケージで飼育していたものの、飼育下繁殖は失敗つづきで関係者の努力と苦労は大変なものでした。また当時、コウノトリは農家からは、「イネの苗を踏み荒らす害鳥」とみなされていました。しかし、このことは「科学的にそうではない」というデータが公表され、払拭されました。ただし、苦労は現在も続いています。農家の方々は、いまではすっかりコウノトリの味方ですが、時にはそれが行き過ぎて、「1羽1羽がかわいい」という方もおられます。コウノトリは野生動物なので、生まれたヒナの一部は死ぬのが当たり前なのですが、そういう方々にはそれが受け入れられません。その結果(人が給餌などによって助ける)、兄弟姉妹が増えすぎて近親婚の確率が高まっています。そのほか、いろいろあります。

 

· コウノトリの生態系(「生態」の間違い)の解明が、その保全だけではなく、実際の地域の活性化にどのようにつながっていくのか。

回答:そもそもコウノトリを含む動物たちが「どのような場所でどのように生きているのか」を明らかにするのが(動物)生態学です。ですから「生態がわからないと保全できない」のはあたりまえだというのはわかっていただけると思います。また地域活性化は保全とともにあらねばなりません。動物を犠牲にしての活性化は「持続可能」ではありませんので。

 

・コウノトリ絶滅の理由

回答:強烈な農薬とともに、「遺伝的多様性の低下」が明確にありました。簡単に言うと極めて少ない(もしかしたら1つ)家系しか最後には残っておらず、近親婚による遺伝的劣化が進んでいたことはほぼ間違いありません。

 

· コウノトリの保全と、ワイズユースの考え方にどのような関係があるか。

回答:講義で申し上げたように「活用なくして、保全なし」です。人は役に立つモノは使いながら、それを大切にします。ワイズユースはまさにそういった考え方です。

 

 · コウノトリ保護の活動と、猪保護の活動の違いについて詳しく知りたい。

回答:イノシシとコウノトリの本質的な違いを認識することが大切です。

イノシシは植物食であるのに対し、コウノトリは肉食なので、人にとって大問題となる農業被害を起こすのは一般的にイノシシです。コウノトリについてはイネの苗を踏み荒らす害鳥と思われていたこともありますが、これはヌレギヌであることが証明されており、現在は害鳥という認識はありません。一方、人間から見るとイノシシは「食糧」であると同時に「害獣」です。コウノトリはどちらでもありません。食糧にならないのは、彼らが肉食なので、肉が臭いからです。ですから、元に戻りますが、植物食と肉食の違いは本質的なものであり、保全・保護を行うにあたってまったく違った考え方の元におこなうべき性質のものです。これらを混同すると保護・保全しているつもりが逆の結果を招くことが往々にしてあります。

 

 (生態学についての質問)

· コウノトリ以外の動物や昆虫などにも社会があるのか。面白いものがあれば紹介して欲しい。

回答:「社会」とは何か?が基本です。同じ種であっても個体は皆違う(子は両親の遺伝的ミックスなので、子は両親と違う)ので、一般的に「(進化の結果として)個体は生存と繁殖をめぐって互いに競争をしているはず」であり、そこには必ず「利害の不一致」が見られ、これの解消手段として相互作用(極端な場合は争い)が起こります。生態学においては、生物個体が構成する相互作用系(集団)を「社会」と呼んでいます。みなさんも良く知っている例であれば、“サル”にも社会がありますし、ムシたちにもそれぞれ社会があります。ムシの中でもハチやアリは女王を中心とする社会をもつことで有名です(ハタラキバチは自分の子を産まず、女王とその子:実は妹たちの世話をする)。

 

· 人間活動が生態系に与える悪影響も、生態系の一つではないのか。

回答:私(江崎)は、「人間も自然の一員であり、生物群集の一員とみなすべき」、と主張しています。ですから当然ながら「生態系という地球表層の自然の一員」です。ただし、人が人以外の生態系・生物群集構成員に与える影響は産業革命以来の技術の進歩と共に甚大となり、生態系・生物群集のバランス(わかりやすい例としては、「捕食者は被食者を適度に食うが、それ以上食えないように、つまり絶滅させないように進化してきた」、このことによって自然のバランスが保たれてきた)を崩す規模になってしまいました。ですから、「人間という知性をもつ動物の責任」において、客観的に生態系の現状を把握し、人のインパクトが強すぎる部分においてはこれを控え、逆にインパクトが弱まってしまって困ったことが起きている場合(タケノコをとり、土木建築用材にするためにかつて中国から導入したマダケがその例)には積極的にインパクトを与えるべき時代に我々はいるのです。

 

・地球温暖化に人間は適応できるのか

回答:難しい質問ですが、ある程度の温暖化には耐えられるし、適応できると考えられます。ただし、これ以上の温暖化が加速度的に進むと、適応は困難になるだろう、としか言えません。ですから、今世界が必死で温暖化防止にとりくんでいるのです。この質問には「可能かどうか」よりも、むしろ、「温暖化防止に努力するしかない」と答えるしかありません。この問題を甘く考えてはいけないと思います。

 

(野口さんへの質問)

· 古民家の存在をどのようにして知ったのか。

回答:市役所から大学院に対して話を持ちかけられ、その内容が院生たちに告知されたことで知りました。自分で探したい場合には、その地域の自治体に問い合わせてみるか、「空き家バンク」などの情報を下に探すと良いものがみつかるかもしれません。

 

· 古民家で他人と一緒に住むことで得られたことはあるか。

回答:魚のさばき方を一緒に住んでいる後輩から教わりました。普段何気なくしているつもりで中々出来ていない、相手のことを気遣ったりすることの大切さも再認識させられました。また、それぞれ分野が異なっているのでお互いの分野のことを話たりすることで、知識も増えているように感じています。

 

· 農業からコウノトリの研究に移行したのはなぜか。

回答:農業について研究すると、農業従業者と自然との関係をしることはできます。しかし、今後人と自然の共生を考えていくためには農業従業者という特定の立場の人のみを対象とするのではなく、一般の人々にも焦点を当てたいという思いが研究内容を移行しようと決意したきっかけです。決意したのち、どこか一般の人を多く巻き込んだ取組をしている地域はないかと調べている中で、豊岡のコウノトリと出会い、コウノトリの研究をしようと決意しました。

 

· デスクワークとフィールドワークではどのような点が異なるか。フィールドワークで新しく発見したことはあるか。

回答:大きく異なる点は受け身的であるかそうでないかだと考えます。どうしてもデスクワークでは誰かが行ってきた内容を聞いたり見たり知ったりすることが中心となります。しかしフィールドでは自分自身がその場に足を運び、見て判断を行うなど主体的に動くことが基本となります。

 

(地域資源マネジメント研究科についての質問)

· 大学院の人数、どのような学部から来ている人がいるのか。

回答:現在M1・・・11名、M2・・・10名の合計21名、在籍しています。

出身学部としては、工学部、地域学部、理工学部、総合政策学部など様々な学部出身者

がいます。

 

· 地域資源マネジメントについて、経営学の視点から見るアプローチはあるか。

回答:大いにあると思います。地域資源を持続的に利用していくためにも、どのようにそれらの資源を利用していけばいいのかを、経営学的な視点から見てみるのも面白いのではないかと考えます。

 

· 地域農業の実態や問題について、どのような取り組みを行っているか。

回答:私が学部で調査を行っていたときは、対象地区の多くは個人で農業を行っているのではなく、営農組合に水田などの運営を一括して行ってもらう形を取っていました。そうすることで個々人にかかる金銭的な負担や労力を削減しながら放棄される農地を減らすように努力されていました。近年では企業が農地を買い取り、大規模農業を行っている地域も増えてきていると考えられます。

 

· 地域の方との意見交換で話し合っているテーマをいくつか教えて欲しい。

回答:よく話題に挙げられるのは、今後自分たちが今活動している豊岡はどうなっていくのかといった「豊岡の未来像」についてが多いです。それ以外にも地域の中を流れる川についてや、その地域で今取り上げようとしているモノについて、私たち大学院との連携の在り方などについてもテーマとして取り上げて話をしています。

 

· 修了後はどのような職業につくのか。

回答:この研究科は昨年4月に新設された研究科なので過去の就職先のデータはありませんが、現在在籍している研究生が就職先として考えているモノを例にここではあげておきます。

Ex)建設・環境コンサル(生態学部門所属者)、一般企業(社会学部門所属者)、公務員

 

(学び方についての質問)

· NPO団体での活動につながるような人脈はどのように作ったら良いか。

回答:まずは自分から様々な団体を調べ、それらの団体が行っているフォーラムなどに参加してみるといいと思います。そこで活動している人と話していくうちに繋がりが出来、一つ出来ればその人から更に紹介してもらうなどして、繋がっていけると思います。自分のゼミの先生から最初は紹介してもらうという方法もあると思います。