COC概論第9回、第10回を実施しました。

「COC概論」の第9,10回目の講義を実施しました。今回は、ソーシャルビジネス系プロジェクトフィールドを担当する経営学部池田教授からのご講演と、尼崎市から能島参与にお越しいただきました。以下が概要となります。

 

COC概論 第9、10回(2015年6月17日)

ソーシャルビジネス系プロジェクトフィールド担当回
(ご講演順)

・3限目(13:00~14:30)
「COC尼崎プロジェクトの取組」
池田潔 教授 (経営学部)

「ソーシャルビジネスと尼崎市の課題」
能島裕介 参与 (尼崎市・兵庫県立大学客員教授・特定非営利活動法人ブレーンヒューマニティ理事長)

・4限目(14:40~16:10)
質疑応答及びトークセッション
池田潔 教授
能島裕介 参与

 

学生のレポート執筆

 

3 限では池田教授から、ソーシャルビジネス系プロジェクトフィールドでの取組みについて、まず、COC事業における尼崎地域について概要の講義が行われました。例えば、都市地域にあっても人口減少や少子高齢化の問題などは同様に起こっており、特に、かつての高度成長期を支えた重工業のまちは「課題先進都市」ともいえるほど、社会課題が早くから顕在化している現状などについてお話されました。また、尼崎市をよりよく知ってもらうために、尼崎市作成のDVDを上映し、尼崎市の良さを見ることで、地域の弱みと強みの両面を学習しました。その後、ソーシャルビジネス・コミュニティ・ビジネスについての定義や活動領域について講演されました

また、尼崎市の能島参与から、全国で活躍するソーシャルビジネスの紹介と、尼崎市の課題について包括的に講演いただきました。紹介された事例では、健康・医療・福祉分野、子育て・教育分野、地域活性化分野、国際支援分野など、多岐にわたる活動を行うNPOや株式会社について紹介されました。

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4 限では、能島参与が実際に活動を行っている「Chance for Children」の活動内容についてお話をいただきました。学校外教育バウチャーを利用した相対的貧困家庭に対する教育支援について詳細な説明と、活動の意義について非常にわかりやすく講演いただきました。また、3限の授業内容についての学生からの質問には、池田教授、能島参与のお二人から詳しく回答していただきました。

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学生からの質問は、Chance for Childrenの活動内容や、尼崎地域での課題の詳細について等、授業内で触れられなかったことを積極的に聞きたいというものが多く寄せられました。時間の関係で、全ての質問に答えることは叶いませんでしたが、以下に、当日の質問内容に対する、お二人からのご回答を掲載します。授業の振り返りに活用してください。

【貧困家庭について】

  • 父子家庭は貧困ではないのか。
    母子家庭に比べ、父子家庭の平均所得は高い状況にあります。一般家庭の平均所得と比べると父子家庭の平均所得は低くなっていますが、貧困という観点から考えると母子家庭の貧困率の方が非常に高い状況です
  • 母子家庭に対する、精神面でのケアはどのようにされているか。
    母子家庭向けの支援施策は、就労支援が多く、精神的なケアに関するケアについては十分に行われていない状況です。
  • 貧困層の子どもたちに対する、大学生による進路相談や学習ボランティアにはどのように参加すればよいか。そのために必要なものはあるか。
    CFC東日本事務局(仙台市)では年に2回、ボランティアの募集を行っており、基礎研修の受講及び継続研修の受講が義務づけられています。
  • バウチャー制度の取り組みなどは、関西ではまだ少ないと聞いたが、それはなぜか。
    現在、わが国において学校外教育バウチャーはまだ十分に普及していない状況です。その一方で、東日本大震災被災地に対しては多額の寄付が集まるため、比較的広範囲バウチャーを提供することが可能になっています。
  • 「相対的貧困」家庭の子どもや親の健康状況は、そうでない家庭に比べてどのようであるか。
    相対的貧困状況にある家庭の親は、そうでない家庭の親に比べて、健康上の問題がある比率が高いことが明らかになっています。
  • 貧困家庭の子どもの学力向上にむけた具体的な取り組みが知りたい。
    現在、行政としては主に貧困家庭の子どもを対象とした無料の学習支援教室を設置することが行われています。大阪市等、一部の自治体において学校外教育バウチャーを給付する取り組みも始まっています。
  • 都市地域以外での貧困層の子どもに対する教育支援は行われているのか。
    上記の通り、行政により無料学習支援事業が行われている地域もあります。
  • CFCで行う学校外教育バウチャーには、誰でも参加できるのか。なにか制限・給付の基準はあるのか。
    家庭の経済状況による審査、書面による学習意欲等に関する審査、面接審査等があります。
  • CFCのへの寄付は誰に、どのように募っているのか。
    CFCの寄付は(1)企業団体からの寄付(2)個人からの寄付を募っています。企業等からの寄付については、東京事務局を設置し、担当の職員が各企業に営業して、寄付を募っています。個人からの寄付についてはWEB等による広報や講演会等のイベントによる広報を行っています。

 

【尼崎の課題について】

  • 尼崎市に障害を持つ方の割合が多いならば、障害をもつ子どもの人数も多いのではないかと考える。障害児に対する支援はどのように行われているのか。
    障害児に対する支援については原則として児童福祉法という法律に基づいて、各種の支援が行われています。
  • 尼崎市は工業のイメージが強いが、どうして失業率が高くなるのか。最近移住してきた人との違いはあるのか。
    高度成長期においては、重工業が盛んであり、尼崎市内の工業もその経済を牽引していましたが、産業構造の変化により、わが国の重工業全般が衰退していったことにともない、工場の閉鎖や下請け企業等の業績悪化なども生じ、失業者が増加しました。最近になって、尼崎に移住してきた市民は、通勤の利便性や大規模なマンション開発等によって移住してきた方もおられます。
  • なぜ、課題に苦しんでいる地域団体、住民が取り組みに協力する必要があるのか。行政がより積極的に支援すべきではないのか。
    現在、わが国の財政状況は国、地方自治体ともに極めて厳しいものになっています。その一方で、市民のニーズは多角化、多様化するとともに、高齢化にともない社会保障費は増大してきています。そのような状況の中で、すべての市民ニーズを行政だけで担うことは極めて困難な状況です。また、本来的に地域住民や地域団体は相互に助け合っていく「共助」の役割も存在しています。

 

【その他】

  • 能島さんが尼崎、兵庫、近畿、日本と、それぞれでみて、特に注視している課題とそれについての考えをお伺いしてみたかった。
    私が個人として注視している課題は国、地方を問わず教育に関することです。わが国においては急速に高齢化が進むとともに、少子化も進行しているなかで、次世代を担う子どもの教育こそが、この国の持続性を高めるものだと考えています。
  • 支援が必要な人々は、どのようにして(支援をしてくれる)NPOの情報を得ているのか。NPO側で何か工夫をしているのか。
    支援が必要な人々に対して、NPO側がしっかりと情報を届けることはとても大切な事柄です。その一方で、NPO側の基盤が脆弱であることなどにより、十分に情報提供ができない状況もあります。NPO側としては、独自にWEBや紙媒体などによる情報提供を行っていますが、それだけでは十分ではなく、行政等との協働による広報力の強化は喫緊の課題といえます。
  • ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスに取り組んだ方の失敗談などを教えてほしい。
    個々の具体例は紙面の限界もあり、お伝えすることが困難ですが、一般的にソーシャルビジネスやコミュニティビジネスで失敗するパターンとしては(1)提供するサービスと受益者側のニーズの不一致(2)事業者側の体制の不十分さなどがあるように思います。
  • 過去に、尼崎以外の場所で大学がSBやCBに取り組んだことはあるか。また、その取り組みでは課題解決にどのくらいの期間が必要だったか。
    昨今、大学COC事業の関連で、COC事業を実施している大学においてCBやSBを実施している事例は増えています。もっともCBやSBを実施し、地域に定着した取り組みとするためには数年以上の事業継続が必要であると考えられます。

 

(3限後の質問 ※授業内で取扱いされたものを除く)

【全般】

  • ソーシャルビジネスの手法を用いて事業を行っていくことで、行政のコストは削減できるだろうが、開業にかなり多くの資金が必要に思う。市はこの資金の援助をしていたのか。また、この援助ができないような借金の多い市では、同じようにソーシャルビジネスでの事業を行うことは不可能なのか。
    尼崎市では現段階において、ソーシャルビジネスの開業のための資金を提供するような制度は持っていません。一方、兵庫県ではコミュニティビジネスの開業支援として助成金制度などを持っています。
    もっとも、ソーシャルビジネスはあくまでも民間の事業として自立した運営が求められることから、行政による安易な資金提供は適切でない場合もあります。
  • ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスを行うことで生まれるデメリットはあるか。
    特にないかと思われます。

【尼崎について】

  • 様々な課題を解決する手段として、なぜ、尼崎市ではソーシャルビジネスに着目したのか。その他の方法ではダメなのか。
    ソーシャルビジネスは民間の力を活用して、地域課題を持続的に解決する手段として、非常に有効であると考えています。その一方で、課題を解決する手段としてはソーシャルビジネス以外にも様々な手法があり、それらも並行して実施していくことが重要だと考えています。
  • 尼崎市で、実際にソーシャルビジネスの手法を使った施策について、どんな事例があるのか知りたい。
    現在、尼崎市では(1)ソーシャルビジネスの普及啓発のためのフォーラム等の事業(2)ソーシャルビジネスに関するビジネスプランコンペ(3)ソーシャルビジネスに関するインターンシップの実施などを行っています。今後、インキュベーションスペースの開設なども計画しています。
  • 尼崎市の工業の衰退を食い止めるための施策はあるのか。
    工場の誘致などを行うとともに、ものづくり系の中小企業などに対する各種の支援施策を行っています。詳細は下記のHPなどをご覧ください。
    http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/yusi_josei/index.html
  • 市民や学生による課題発掘について、これ迄挙げられたものの中で具体的に改善された課題はあるか。
    課題発見プランコンペは今年度から実施されるもので、現在、その募集の準備を行っているところです。
  • 尼崎市は在住外国人が多いと聞いたが、その内訳はどのようなものか。
    法務省在留外国人統計(2014年12月末)では、尼崎市内の在留外国人の内訳は下記の通りです。
    総数(10,949)、韓国・朝鮮(7,870)、中国(1,524)、ベトナム(389)、フィリピン(301)、ブラジル(148)、米国(120)、台湾(71)、ペルー(54)、その他(472)
  • 尼崎市で行われる多文化共生に向けた具体的な取り組みを教えてほしい。               尼崎市では平成6年に「尼崎市国際化基本方針」を定め、平成11年には「共に生きる 開かれたまちへ」という冊子をとりまとめ、多文化共生への取り組みを行っています。詳細は下記のHPをご覧ください。http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/hataraku/zinken/056kokusaika.htm