「COC概論」第13、14回目の講義を実施しました。

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「COC概論」の13、14回目の講義を実施しました。

 

3限目:防災・減災系プロジェクトリーダーによる講義

森永速男(防災教育研究センター教授)

地域防災・減災系プロジェクトフィールドの目的となる、災害に強いコミュニティ作りについて講義を行いました。

 

4限目:地域で課題解決に取り組む方からの講義

酒井亮一さん(舞子だんじり保存会世話人、舞子親父の会会長)

赤松真人さん(西舞子一丁目自治会長)

兵庫県西舞子地域の取り組みを元に、地域防災・減災対策を進めるために必要なこと、地域で課題解決を進める中で生じる問題等について講演をいただきました。

 

(3限目講義要旨)

災害に備えるための学びに必要なキーワードに、「自助・共助・公助」という分類があります。公助は行政等公的機関の支援、共助は地域社会の中での相互支援、自助は自分の身を守るための備えです。災害から身を守るためには、公助に頼るだけではなく、自助・共助が重要になってくることが、阪神・淡路大震災の教訓から明らかになっています。

 

プロジェクトでは、このような自助・共助の下支えとなるコミュニティ作りに取り組んでいます。南あわじ市の阿万町では、地域祭りの持続に向けての支援活動を元に地域との信頼関係を構築し、地域住民の意識を防災に向けるための防潮堤のデザインや、ICTを活用して災害時の危険箇所を把握するためのまちあるきなど、地域住民と協働した取り組みを始めています。

 

神戸市垂水区舞子地区では、小学生を対象にした防災セミナーの実施や、想定される津波災害に備えた勉強会などを行っています。学生はその中で防災キャンプの運営や、コミュニティづくりのプログラムの開発などの役割を通して、様々な経験をしていきます。コミュニティづくりにはまず地域住民と顔と顔を突き合わせた関係が重要です。多様なプログラムを行う意義はここにあります。

 

学生が入ることは、地域にとって大きなメリットがあります。まず、外部の学生の視点が入ることで、地域の住民がこれまで気がつかなかった魅力を発見するきっかけになります。さらに、これまでできなかった取り組みが始められる、地域住民の取り組みへのモチベーションが上がるなど、地域活性化に向けての様々なメリットがあります。

 

活動を通して学生は、一つの地域をしっかりと見つめます。この経験により自分の育った地域や、これから住まう地域を見つめられるようになります。地域の方との対話により、コミュニケーション能力が身につきます。このように座学では得られない様々な学びを得ることができます。

 

地域で取り組むにあたっては様々な問題点があります。取り組みをどのように持続・継続させていくか、若い世代と高齢者との関係構築、若い世代にどのように地域に愛着を持たせ、新しい地域活動への参加者を増やすか。何より、住民自らが頑張らなければ、「災害に強いまち」にはなりません。このような問題点を乗り越えて、私たちのプロジェクトでの取り組みを、息の長い平時の取り組みにつなげていかなくてはなりません。

 

(質疑応答における代表的な質問)

Q.住民が我が事意識を持って取り組むための工夫は行っているか。

A.まず防災意識を持った仲間を増やすことが重要と考えている。地域住民の間に顔と顔のつながりを作り、防災のイベントへの参加者を増やすための取り組みを進めている。

 

Q.共助が必要な場面が生じるのは、公助が不十分ということではないのか。

A.この質問は一面には正しいところを突いている。ただし、災害のような特殊な環境に対して公助で十分と言えるだけの備えを整えると、それだけ税金が高くなってしまう。行政のコストを抑えつつも、安全・安心できる防災環境を整えるためには、共助と公助のバランスを考えていく必要がある。

 

※地域防災減災系プロジェクトフィールド回への質問と回答を以下に掲載します。講義の振り返りに活用しましょう。

 

【赤松様への質問】
Q.自治会長を引き受けたり、地域に深く関わろうと思ったきっかけを教えて欲しい。
A.子どもが過ごす、子どもにとってのふるさとがより良いものであるように、と思い、他人任せにせず引き受けました。

 

【地域防災の取り組みについて】
Q.舞子地域では複数の地域(丁)で合同の防災活動を行ったりはしないのか。
A.ふれあいのまちづくり協議会が年に1回防災訓練をしています。今後、プロジェクトはそれに参加・協力して行きたいと思っています。ただし、場所によって災害の様相も規模も違いますので、やはり津波被害想定のある西舞子1丁目に特に関心を持って関わりたいです。

 

Q.地域イベントを実施するにあたっての広報の工夫を紹介して欲しい。
A.小学校やPTA等、地域の組織・団体と連携して、広く広報をしていきたいと思っています。SNS等のネットを使った広報も考えていますが、未だその活用には問題が多いようです。調査を進めながらいずれはそれも活用します。

 

Q.地域が年代別に役割を決めることによるメリットはどこにあるか。デメリットはないのか。
A.各世代がまちの行事に何らかの役割を持って関わりを持つことは、各世代の住民がまちのことを知り、考えるというメリットがあります。一方、強制的な側面もありますので、反発を感じる住民もいるかも知れません。自主的にまちにおける役割を持ってくれない現実がありますので、そういった現実に対しては、この半強制的な仕組みは重要だと思います。

 

【防災・減災の考え方について】
Q.防潮壁が西舞子の景観を変えたとの話があったが、防災・減災の試みと、景観形成や地域の生態系などの様々な地域の問題と、バランスをどのようにとっていけば良いか。
A.プロジェクトでは、防潮壁などのハードな面の充実を目指しません。ハード面の対応だけでは乗りこえられない問題があると思うからです。景観や自然環境はとても大切なまちの要素だと思います。それとハード対策とのバランスをとることも重要です。ただし、これらの問題は住民間で十分にコンセンサスをとることが重要です。プロジェクトでは、行政の取り組みに口出しせず、住民自らの自発的な対策の芽生えに期待した取り組みを進めています。

 

【学生の取り組みについて】
Q.大学生が考えるべき「自助」について教えて欲しい。
A.犯罪、事故、災害から自分の身を守るためのヒントは日常に溢れています。ニュースなどの報道や人からの情報に耳を傾け、何故犯罪に遭遇したのか、何故事故が起こったのか、何故災害となってしまったのかを考え、それを回避するために何が必要だったのかといったことを、自分のこととして考えておくことだと思います。危機管理といったリスクの理解、回避の方法の修得を日常の生活の中で心がけてください。

 

Q.自分の住まう近隣地域のコミュニティに入る方法を教えて欲しい。
A.地域では、皆さんも参加できる何らかのイベント(祭りや清掃活動など)が多く開催されています。まちの広報誌や町中のポスターに関心を持ちよく見ておくこと、そしてそういったイベントに積極的に参加し、主体的な役割を徐々にもらい、経験していくことが重要です。良く参加していれば、地域の人から声をかけてもらえ、自ずと入り込んでいけると思います。

 

【プロジェクトの取り組みについて】
Q.防災キャンプなどで子供が楽しみながら防災を学ぶような工夫を取り入れたプログラムがあれば紹介して欲しい。
A.子どもたちは大人とは違って好奇心が旺盛です。子ども向けの、体験できるイベントを考えることです。防災キャンプや消火活動などを含めて防災イベントがやはり一番楽しんでくれるイベントです。私たちは子どもが「まちのことを好きになって欲しい」と考えていますので、環境学習(海や川での遊び)、餅つき、ハイキングなどもイベントとして重要と考えています。これらは子どもたちも大好きなイベントです。

 

Q.プロジェクトが終了した時に地域コミュニティがどのような状態になっていることを目指していますか。
A.まちの住民そのものが、「住民が普段から繋がっていることの重要性」に気づいて、定期的な種々のイベントが定着することです。その際、一部の人に負担とならず、多くの住民が運営に携わるようなコミュニティになっていてくれると良いなと思います。

 

災害はどんな地域においても滅多に起こらない出来事です。大規模災害を受けた地域であっても、時が経てば震災の記憶が薄れ、防災・減災の意識はどうしても弱まっていきます。防災・減災意識を高めるだけではなく、様々なコミュニティ活動を活性化させて「人の繋がり」を作っておくことも、災害時の被害を減少させる重要な取り組みなのです。

 

Q.兵庫県下で他に防災の観点で注目している地域を紹介して欲しい。
A.神戸や阪神間は、やはり水害のまちです。その点で現在住んでいる場所の地形的な面について知って、考えておいてもらいたいです。川の周囲で川底よりも低い土地にある住宅や山麓部にある住宅は危険です。

 

阪神間では人間の治水の営みが古くから行われているため、尼崎市を流れる武庫川や、芦屋市の芦屋川、神戸市の住吉川、石屋川など、多くの河川が天井川になっています。このような六甲山南麓(いわゆる甲南地域)の、急峻な山地から一気に海へと流れ下る川が氾濫したのが1938年の阪神大水害で、10万棟を超える家屋が浸水しました。

 

山間部に住宅を持つ人にとっては、自宅が豪雨の際の水の通り道になっていないか、裏山から水が出ている箇所はないかなど、日常的に点検をしておいて欲しいです。大雨になれば、川や水路を横切らないで行ける避難場所に逃げることも想定しておいて欲しいです。
南海トラフで地震が起これば、兵庫県南部では震度6強以下の大きな揺れが想定されています。自宅及びその内部の点検(耐震補強や家具の固定)を今一度してもらっておく必要があります。

 

津波は淡路島と瀬戸内海側の地域には必ずやってきます。地震後に時間的余裕がありますので、事前に避難経路と場所の確認と実際の避難をしておいて欲しいです。高台や強固なビルの上の階に逃げれば必ず助かります。さらに、近隣の災害弱者についても知っておいて欲しいですね。そして可能ならば、災害時に助けてあげられるよう、事前に交流しておきましょう。

 

共助の観点で見れば、旧北淡町富島地区(現淡路市)では、阪神淡路大震災で甚大な被害を受けたにも関わらず、普段からの見守りネットワークが機能し、発災当日の午後3時過ぎには、全員の安否確認が終了していました。普段のコミュニティのつながりが減災に繋がった事例です